留学体験インタビューIINTERVIEW
JSAF留学Story ~ダブリン大学トリニティカレッジ 桝水 美伽さん~
JSAF留学STORYでは派遣した学生の留学を紹介し、これから留学する方へ留学へのイメージをより具体的にし、留学するのに必要なことをその後紹介していきます。
シリーズ第三回である今回紹介する学生は2015年秋学期にJSAFのPrestige留学プログラムで世界でもトップレベルのアイルランドの名門校ダブリン大学トリニティカレッジへトビタテ!留学JAPANの選考に合格し留学した桝水美伽さんです。桝水さんは留学中、アイルランド銀行でのインターンも経験してきました。
それでは、桝水さんの留学を見ていきましょう。
留学先:ダブリン大学トリニティカレッジ(アイルランド)
ハーエリザベス1世により、1592年に設立されたダブリン大学トリニティカレッジは、ヨーロッパの最も歴史のある大学の1つです。トリニティカレッジは、サンデータイムズ紙でも、アイルランドの最高学府としてランキングされています。トリニティカレッジは、アイルランドでの最高研究機関としても有名です。国際企業や国際研究機関との共同研究を実施しており、研究成果は絶えず、国際的な注目を集めています。キャンパスには、日立ダブリン研究所を持ち、基礎及び応用リサーチをおこなっています。 図書館は、アイルランド及びヨーロッパでも、最も、重要なものの一つとなっています。英国及びアイルランドで過去200年に発行された書物及び印刷物の版権を有しています。425万冊の蔵書と地図、音楽、歴史的な文書のコレクションがあり、珍重される中世の写本コレクションの中には、世界的評価を受ける18世紀の「ケルズの書」も含まれています。
今回桝水さんがトリニティカレッジに留学をしようと思ったきっかけを教えてください
私は高校3年生の時にアイルランドに3週間語学留学で行ったことがあり、そのおしゃべりで親切、かつ陽気な国民性に以前から魅力を感じていました。そのため、大学一年生のころから日本でアイルランド文化を普及するためのボランティア団体の広報を担当し、最初の年に、在日アイルランド商工会議所が主催するイベントの運営委員会にその団体の代表として参加しておりました。そのため、アイルランドという国自体にはもともと強い興味があり、トリニティカレッジにはジェンダーのSocially constructedされるプロセスを、メディア学だけでなく社会学を通して包括的に学ぶために留学しました。実際ジェンダーの授業は人数制限がありとることができなかったですが、ヨーロッパで今非常にホットな話題であるraceについては特にトリニティカレッジの強い分野で、重点的に学ぶことができました。具体的には政策やテロといった出来事を通して、メディアやpolitical discourseがどのようにrace (現在はethnicity, cultureといった言葉に置き換えられつつありますが)をsocially constructしているのかについて学び、Racismが残存する原因を探りました。
現地に到着した時の印象はどうでしたか?
アイルランドに来るのは2回目だったので、懐かしいな、という感覚と、新しい生活が始まるとのことでエキサイティングな感覚とが入り混じっていました。ただ、荷物がトランジットに間に合わずヒースロー空港に置き去りにされていたため、寮で初めて会ったフラットメイトたちに挨拶を済ませた直後に「タオルとシャンプーを貸してくれない?」と恥ずかしながら頼んだのを覚えています。
トリニティカレッジの学部授業は日本の授業形式とどのような違いがありましたか?
日本の授業と違う点はリーディング量がとにかく多い、レクチャー(教授が話す)とチュートリアル(学生のプレゼンとディスカッション)の役割がきっちり分かれている、TAとの距離が比較的近く相談しやすい、レクチャーの半分が学生からの質問とそれに対する教授の返答や議論になることも多いなどが挙げられます。
現地での生活を通して学んだことは何ですか?
アイルランド人やヨーロッパの人たちとの会話を通して、日本にある既存のルールや価値観に疑問を持つようになった。例えば、締切厳守の日本とは反対に、アイルランドではクオリティを高めるための締切の引き延ばしが認められている。つまり、クオリティ重視で考えれば、締切は絶対的なルールではないという考え方です。また、日本ではホームレスを「汚い人」「人生に失敗した人」として蔑み、避けがちですが、アイルランドでは誰にでも起こりうること捉え、ビールを買ってきて一緒に座り込んで話をしたり、お金をあげたりと助け合う姿をよく目にします。アイルランドと日本での物事の捉え方の違いから、日本人の考え方がいかにコントロールされているか、ルール・価値観にしがみつくあまり見落としている視点があるのではないかと考えるようになった点で非常に成長したと思います。
トリニティカレッジで語学力上達のために工夫したことを教えてください
レクチャー以外にも、アイルランド人に勧められたPodcastやYouTubeで常にアイルランドの「今」やアイルランド人が興味のある話題(アメリカの大統領選挙をはじめ、アイリッシュUFCファイターのコナー・マクレガー、ラグビーのSix Nationsなど)に触れるよう努力していたため、リスニング力が向上しました。また、こういった話題作りのための努力が功を奏し、様々な話題におけるボキャブラリーが増加し、普段はあまり話をしないようなカテゴリーの人々(UFCファイターやラグビー好きなアイリッシュなど)と話をする機会も増え、スピーキング力の向上にも繋がったと思います。
アイルランド人の学生は比較的「世間話」に花を咲かせる人が多い一方で、その他ヨーロッパの学生は「議論」をしたがる人が多いです。前期はアイルランド人といることが多かったため、「世間話」で授業の内容を分かりやすく説明する力をつけた一方で、後期はヨーロッパの学生らと多く話す機会があったことにより英語での「議論」の仕方を学べたように思います。
トリニティカレッジでの交友関係について教えてください
前期は2年生のアイルランド人と固定のメンバーでいることが多かったのですが、後期は3年生のエラスムス留学生や、歯科を学んでいる2年のパキスタン人やシンガポール人、トリニティ大学で研究をしているアルツハイマーを専門とする脳科学者など、一緒にクラスで一緒にディスカッションをしたクラスメイトやその友人らとどんどん繋がっていき、交友範囲が広がっていきました。
インターンを通して学べたことについて教えてください
バンクオブアイルランドで働いて一番感銘を受けたのは、そのおおらかなコーポレートカルチャーでした。日本にありがちな人を蹴落とそうとしたり競争心をむき出しにしたりするような社員がおらず、皆優秀であるにも関わらず自分が頑張っているという「ガツガツ感」を一切ださず余裕をみせつつ、競争するのではなくお互い助け合う、といった大らかなカルチャーを持っていて、人間関係においてまったくストレスがなかったことは非常に驚きでした。こういったカルチャーはおそらくイギリスやアメリカ、あるいは日本といった「No.1」に慣れている勝ち組メンタリティにはあまりない考え方で、アイルランドのような大国の横の小さな国というのは、競争心をむき出しにしてストレスフルに「No.1」になることよりも、「人生を楽しむ」ことの方が重要であって、頑張っていることを見せるよりもいかに自分が精神的に余裕をもって楽しんで生活・仕事をしているか、が公的にも私的にもバランスのとれた人間として尊敬のポイントになっているようでした。
彼らの話を聞いていると、自分について話すときは自分の功績やどれだけ仕事が大変かについて話す人は全くいなくて、自分の馬鹿な失態をさらけ出すことでお互いにからかいあって雰囲気を和ます、というような会話の内容が多く、自分から「負け犬」としての姿をさらすことでうわべではなく本当の意味で心を許し、お互いにからかいあえるような関係を築いているのだなと感じました。
そういった意味で、本当にできるバランスのとれた人というのは、「ガツガツ」せず他人におおらかに余裕をもって接することができ、かつ表には見えないように自分自身には厳しくあるべき人なのかなあと考えるようになりました。
これからアイルランドへ留学する後輩へのメッセージはありますか
アイルランド人は勉強をしないと見せることが「クール」だと思っているので、あまり「真面目さ」を見せても感心されません。余裕を見せてジョークを飛ばして仲良くしつつ、実はひそかにきちんと勉強を進めているという人が多いのできちんと自分で遊びと勉強のけじめをつけて生活することがアイルランド大学においては重要なことだと思います。
上記の質問以外で、留学を通しての現在の想いについて教えてください
日本にいると、ヨーロッパ、西洋諸国とひとくくりにしてしまいがちだが、白人でありながら歴史的に元被支配国であり、差別に苦しんできた国民だからこそ培われたアイルランド人独特の価値観に触れると、ヨーロッパといえど非常に多様であることを体感することができ、これまでの固定観念が大きく変わるような経験ができて非常に良かったと思います。